暑い夏も過ぎ、もうすぐ遠く眺めみる山の木々も色づきはじめる。そうすると食
欲の秋、この言葉を聞くとまた私の腹が鳴り始める。鳴った腹をおさめる為に食べ
に行くには、あんまり遠くはちょっと困る、そんなときは「そば」が良い。などと
ボケつつ秋の食欲(腹)を満足させに行ってみるか。
よった店は旧国道13号線を駅から北に向かい、新寒河江街道をすぎてまもなく
右に見える「やま竹」さんである。
風格のある門をくぐり、旧家の中を直した店内に入り、太い半分の丸太でてきた
机の前に座った。さっそくせいろの大盛りを注文する。店内は落ちついた雰囲気で、
ゆっくりと時が過ぎるような気さえする。間もなくして蕎麦は出てきた。蕎麦は細
くその肌は白っぽくなめらかでほのかに色が付いている。いわゆる田舎蕎麦とは、
一線を画する蕎麦である。初めて食べた時は、田舎蕎麦こそ蕎麦であるという、自
称蕎麦通の多いこの地でこのような蕎麦をだすとはかなり思いきったことをする人
だと思っていたが、蕎麦は細くても太くても、また黒くても白くても、良いものは
良いということが食べてすぐに分かった。
また、蕎麦豆腐・蕎麦雑炊にてんぷらやせいろ等が揃う五品のミニ蕎麦会席「な
ごみ御前」等、気軽に楽しめる蕎麦にこだわった一品も味わうことができる。
午前中には通りからご主人自らが蕎麦を打つ姿を見ることができる。まさに手打
ち。そして、その蕎麦はこの地においては他にはない味といえる。
ここにまた新しい味が天童の味に加わった。他の店と、競いながらこれからも益
々良いものを提供してほしい。
さて、この「食べある記」は今回で最終回とさせて頂きます。つたない文章でし
たがご愛読いただき誠にありがとうございました。私は食べることは好きなものの、
食べ物に関しては全くの素人であり、専門的な知識もないまま、普通の感覚で書か
せて頂きました。しかし、「食べある記」を通して地元の味を知ってみると、この
地もまんざら捨てたものではないと思うようになってきました。身近なことだけに
知っているつもりになっていて、本当の良さを忘れている。そんなことが多いよう
な気がします。まだまだすばらしい味やものや人がこの地には多く存在しています。
ちょっと探してみると本当に良いところに住んでいるんだなと言う気持ちになって
きます。
また、何かを探しにぶらっと歩き始める時まで、さようなら。