『星賀 光のぶらっと食べある記』平成6年”夏”


『星賀 光のぶらっと食べある記』 平成6年7月号
「そば処 泰光」さん
 昨年(1993年)は、結局やって来なかった「夏」。せめて今年の夏は夏らし い天気になって欲しいと思う。しかし、今年も春の遅い霜などで初夏の味覚さくら んぼにかなりの被害を被ったという、そんな中でも「さくらんぼ」を目当てに多く の観光客が山形県にやって来た。また、五百年前のこの時期に当地を訪れた旅人も いた。その旅人は山寺に向かう途中にこんな句を残した「眉履きを 面影にして  紅の花」。その旅人の名は松尾芭蕉。その句碑のたっている天童市石倉に行く途中 の街道沿いに、今回訪れた「そば処 泰光」さんがある。
 数年前に建て替えた店は、落ちついて清潔な感じがする。店の中に入るとゆった りと座敷とテーブルが配置してある。壁には「板そば」「てんぷらそば」等の貼り 紙。中には「たぬきラーメン」等もある。メニューを見るとラーメンも色々な種類 がそろっている。そういえば、以前祇園小路の入口にあったラーメン屋さんの名前 も泰光だったなと思った。 しかし、ここは板そばを注文。あまり時間もたたずに 板そばが運ばれてきた。蕎麦は中程度の太さで、やや黒いという感じである。その 蕎麦が杉の板(箱)にたっぷりと入って出てくる。タレもたっぷりとあり、味は全 体的にあっさりとした感じである。大盛りを頼んだが、量的には充分であった。蕎 麦をおかずに蕎麦を食べたというところか。
 最後に、土瓶に入れて出されたそば湯を注ぎ全て腹の中にと消えていった。確か な歯ごたえと、そばの味を楽しむにはとてもリーズナブルな価格であった。
 外に出ると、日差しが痛いくらい。何処から来た人も満足させてくれる物がこの 土地にあふれていることが、とても嬉しい気持ちにさせてくれた。芭蕉もそばを食 べたのだろうか?

『星賀 光のぶらっと食べある記』 平成6年8月号
そば処「吉野屋」さん
 暑っーい。今年の夏は昨年の無かった夏も一緒に連れて来たようだ。連日30度 を越える猛暑続きで、体もややバテ気味状態の人も多いだろう。そんな時は海に山 に避暑の為に行く人もいるだろうが、ここは身近な避暑をたずねてみよう。
 そんな事で今回寄った店は天童病院となりのそば処「吉野屋」さんである。駅西 からも近く、まちの食堂と言った感じのする店である。中に入り席についてみると、 奥の座敷には家族連れが楽しそうに食べていた。正にまちの元祖ファミリーレスト ラン。
 早速メニューを見ると季節メニューの欄に目が止まった。冷し中華・冷しラーメ ン・冷し味噌ラーメンとある。この時期暑さに負けない為には冷しラーメンと思い 注文をする。 出てきた冷しラーメン、見た目は普通のラーメンと同じであるが湯 気は立っていない(あたりまえか。)。麺の上にはオーソドックスに、チャーシュー ・茹で卵・シナチク・ねぎ・刻み海苔とナルトが乗っている。そして澄んだスープ に氷も浮かび、いかにも涼味満点といった感じ。麺は冷やしている為か更にシコシ コと歯ごたえがあり、あっさりしたスープでもしっかりとダシがきいてコクがある。 うーん満足。
 冷しラーメンの他に、谷地には「冷たい肉そば」、また全国には冷麺や冷し中華 等スープの入った冷たい麺が沢山存在するが、この地のラーメン好きな人達がこの 冷しラーメンを作らせてしまったのだろう。
 また、このような食堂には店の人と地元の人、そしてお昼を食べにきた仕事中の 人等の間に何とも言えない雰囲気がかもし出されている。大手チェーンのファミリー レストランには真似のできない人情を感じるのは私だけだろうか。ラーメンだけで なく丼物や蕎麦、うどん等バラエティーに富んだメニューも魅力である。
 まだまだ天童には、その土地の人と共に生きている食堂が存在することが分かっ た。正に手作りの店で土地の人の舌にあった味を提供してくれる食堂はその地区の 味のシンボルかもしれない。
 さあ皆で食堂に行って暑さを乗り切ってみよう。

『星賀 光のぶらっと食べある記』 平成6年9月号
天童で食べられる全国のラーメン
 これまで、天童市内の色々なところを食べ歩いてきたが、全国の庶民の味(ラー メン)が天童市内に集結していることに気がついた。
 ただ、ラーメンと一口で言っても北は北海道・札幌ラーメンから南は九州・博多 ラーメンまで全国には様々な土地に育まれた味が存在している。そして元々からラー メンの美味しい天童にも全国各地のラーメンが存在している。
 まず北海道の味として、国道13号戦沿いで中里にある、こってりとした味噌ラー メンが有名な「味の道産子」さん、そして天童では札幌ラーメンの老舗の「どさん 娘ラーメン」さん、また天童温泉紅の庄さんの向かいに海苔付きの餅が特徴の「網 走ラーメン」さんなどがある。いずれも味噌ラーメンや塩ラーメン等いかにも北海 道らしく寒い時など体の芯から温めてくれるラーメンといえる。
 また、ラーメンで「まちおこし」と言えば蔵で有名な喜多方のラーメンの店もあ る、やや太めの縮れ麺と濃厚でいてすっきりとしたスープが特徴のラーメンは見た 目は天童のラーメンに近いものの、食べるとまったく違った雰囲気を持つラーメン といえる。そんな喜多方のノレンをかかげた店「喜多方ラーメン紅花」さんが中部 小の北側でもみじ通り沿いにある。
 また、遠く九州の味も国道13号線からもみじ通りに入ってすぐのところにある。 長崎ちゃんぽんの孔雀さんだが、メニューにはあの豚骨スープが特徴の博多ラーメ ンも名を連ねている。
 こんな風に書いていると、天童人の胃袋はまるで全国のどんな味をも飲み込んで いるようだ。これは食べ物でも何にでも言えるが、天童の気質として来るものは拒 まないというWELCOMEの心であふれている「まち」を意味しているのだろう。
 こうしてみると、食べ物から色々なまちの姿が見えてきたと思う。
 さて、この食べあるきもそろそろゴールが見えてきたようだ。さて美味しい物を 探しながら、またぶらっと行ってみるか。


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